近衛版「シューマン / ライン」

第7回定期演奏会で取り上げた近衞版のラインについて、当日配布した解説をご紹介します。

1楽章冒頭では音符を多く加えてあり、いきなり強烈なハーモニーが響きます。ヴィオラには他の楽器よりも飛び出して演奏する前打音も加えられています。楽器の追加により重厚な印象も受けますが、想像より重く感じさせず、オリジナルとはまた違った曲の広がりを感じさせてくれます(ライン川流域をローレライ上空から眺める風景の様な印象さえ受けます)。さらに弦楽器でのメロディー担当を増やし、オリジナルでの埋もれがちな部分を自然に引き出している部分が多いことも特徴です。51小節目=開始1分頃では、ヴァイオリンを模倣する後追いのフレーズにホルンを加えており、スムーズな流れとなっております。

2楽章では大幅な改訂はみられませんが、テンポの指示を追加して緩急をつけて曲の表情を表しやすくしています。

3楽章の冒頭部分ではクラリネットのメロディーにホルンが追加されています。この楽章もテンポ指示の追加により非常に緩急がつけやすくなっており、聴いていて飽きさせません。3楽章の最後の音が響いた後は、小休止を挟まずそのまますぐに4楽章へ流れて行きます。

4楽章はオリジナルでは4/4拍子となっているのですが、4/2拍子とすることで一歩一歩を踏みしめるような、大聖堂の雰囲気を表現しています。楽章後半ではテーマをホルンで違和感無く追加されています。

5楽章では冒頭の木管楽器を削除し、遠くから聞こえるカーニバルの音を軽快に表しています。楽章中に出てくる4楽章のテーマを弦楽器に管楽器を追加してより浮き出るようにしている箇所もあります。この楽章もまたテンポの指示を追加して緩急をつけてあり、クライマックスでは細かく指示され、盛り上げ効果抜群です。