「幻の」近衞版第九

近衞版は、近衞秀麿が演奏会を行う度に手を加え試行錯誤され作り上げたものであり、同じ楽曲においても様々な近衞版が存在します(演奏可能な形で現存しているのはごく僅かなのですが……)。

今回当団が取り上げる「近衞版 第九」について調べると、秀麿が指導をしていた京都大学交響楽団の練習所の火災により焼失され、もう二度と実演は不可能である……と多くのウェブサイトや本に書かれております。
長年焼失したとされていた「近衞版 第九」ですが、秀麿の息子の秀健より当団音楽監督が譲り受けた資料用のものが残っており、スコアとパート譜を整備し、今回の演奏会でお披露目できる運びとなりました!

なぜ焼失されたことになっていたのでしょうか?(そもそも火災の被害にあわなかったのでしょうか?)
もちろん見つかったのは思いがけない発見で、こうして演奏に漕ぎ着けることができることは大変幸せなことです!

ただこの事は、近衞版の第九が「複数あった」と仮定するとすんなり合点がいきます。
第九の近衞版は1946〜1962年と16年の歳月を経て完成させられており、その間においても演奏の都度に推敲を重ねていたとするならば、2つ3つと原本があっても不思議ではありません。
たしかに「京都大学にあった近衞版」の第九は焼失されたものの、ちがうバージョンの近衞版が残っていた。こう考えると、何ともシンプルな話ではないでしょうか。

そんな焼失したはずの「幻の」近衞版第九が、数十年の時を経て演奏されることとなります。
一体どの様に鳴り響くのか、、2月11日の東京芸術劇場へ、ぜひ聴きにお越しください!